曽谷朝絵さんは東京藝術大学大学院を2006年に卒業。2001年に「第6回昭和シェル石油現代美術賞展」グランプリ、2002年に「VOCA展2002」VOCA賞(グランプリ)を受賞するなど在学中から活躍し、注目を集めている若手アーティストです。
本展では「Bathtub」「Slider」「The Light」「Airport」などの絵画57点、ドローイング38点、そしてインスタレーション4点と、曽谷さんの代表作から新作まで網羅しました。
会場導入藝大での専攻は油彩でしたが、近年は活動の場を広げている曽谷さん。初の映像インスタレーション作品《宙》(そら)は、第3室で展示されています。
プロジェクターからの映像が鏡面の球体に反射して、暗い展示室の全体に投影。室内にはクッションがあり、座って見ることができます。
展示室は上部が窄まった形で、ゆっくりと色と形が変わっていく映像を見上げていると、まるで色彩の森に包みこまれたような不思議な気分になります。
《宙》2013対照的に展示室全体が明るい光に包まれているのは、第5室の《鳴る光》。光が発する音の波紋を表現した作品で、偏光フィルムを用いて、音を調律するように光と色を操っています。
展示室には靴を脱いで上がることができ、違う角度から見ると模様の色の変化を楽しめます。
ちなみに会場はこの作品も含め、撮影可能な場所が3カ所あります(フラッシュ・三脚・動画は不可です)。
《鳴る光》2013長い廊下状の第6室は、壁面をグラデーションで彩色。「水の心電図」をイメージしており、それぞれの色の面で、小作品がカテゴリごとに展示されています。
本展は、会場全体のディレクションも曽谷さん。印象的な展覧会のタイトルロゴも、曽谷さんが手がけています。
小品が並ぶ第6-a室水戸芸術館では2003年の「こもれび展」と、2011年の「CAFE in Mito 2011」と2つのグループ展に曽谷朝絵さんが出展していますが、今回が美術館レベルでは初の大型個展。
大きな会場に映えるインスタレーションは夏休みで訪れる子どもたちにも好評で、《宙》の展示室からなかなか出てこないと聞きました。
10月中旬には、水戸の中心市街地を舞台にしたパブリックアートも展示される予定です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年8月27日 ]