ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶルネサンスの三大巨匠、ラファエロ・サンツィオ。あまりにもビッグネームなだけに、その作品は所蔵する美術館にとっても“顔”といえる存在です。そのため、今までヨーロッパ以外で大規模なラファエロ展が開かれたことはありませんでした。
第1章「画家への一歩」今回の展覧会は、フィレンツェ文化財・美術館特別監督局が全面協力。ウフィツィ美術館やパラティーナ美術館などのイタリア国内の美術館はもとより、ルーヴル美術館やプラド美術館などからも作品が集結しました。
これまでの展覧会ではラファエロ作品が来日しても、せいぜい数点どまり。20点以上のラファエロ作品が揃うのは前代未聞で、驚くべき大規模なラファエロ展といえます。
第2章「フィレンツェのラファエロ ─ レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとの出会い」会場構成は、ラファエロの画業を年代順に紹介する「画家への一歩」「フィレンツェのラファエロ ─ レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとの出会い」「ローマのラファエロ ─ 教皇をとりこにした美」と、ラファエロ工房の作家などを紹介する「ラファエロの後継者たち」の4章。油彩を中心に素描、版画、工芸など約60点が展示されています。
第3章「ローマのラファエロ ─ 教皇をとりこにした美」本展最大の注目様品である≪大公の聖母≫は、第2章での展示。18世紀末にナポレオンに追われたトスカーナ大公フェルディナント3世が亡命先にも持っていった愛蔵品で、“聖母子の画家”ラファエロの代表作のひとつです。
黒い背景でドラマチックな印象の作品ですが、実は背景は後年に塗りつぶされたもので、元々は室内の風景が描かれていました。背景との境界のキリストの頭髪も、後年の加筆。展覧会では、最新の科学調査による分析結果も紹介されています。
≪大公の聖母≫ルネサンスの三大巨匠を比較すると、ダ・ビンチは31歳上、ミケランジェロは8歳上。もっとも若かったラファエロですが、その生涯はわずか37年(ダ・ビンチは67歳、ミケランジェロは89歳で死去)。ちなみにラファエロは美男子で、過度の女好きが死因とも言われています。
若くして亡くなったラファエロですが、その完璧な絵画は“美の規範”とされ、19世紀半ばまで画家の絶対的な手本でした。アングル、マネ、ルノワールなど、ラファエロ作品を慕っていた画家は、枚挙にいとまがありません。
第4章「ラファエロの後継者たち」著名西洋画家の展覧会は珍しくなくなりましたが、これは別格。2013年上半期最大の注目展です。イタリアつながりでロディとのコラボなど、グッズも充実。国内巡回はせずに、国立西洋美術館だけでの開催となります。(取材:2013年3月1日)