1753年創設の世界最古の国立博物館、大英博物館。年間の来館者数は600万人、所蔵品は800万点以上という桁違いの巨大博物館ですが、中でもエジプト部門はロゼッタ・ストーンを初め10万点以上所蔵するなど、世界屈指の内容で知られています。
本展には2体のミイラ、極彩色の棺、護符、装身具など、約180点のエジプトコレクションが来日。古代エジプトの祈りの世界を多面的に紹介していきます。
会場「冥界の旅I」会場前半は、暗い展示室の「冥界の旅I」から。
死者の書が描かれたミイラの覆い布、守護の力を持つと信じられた副葬品、色鮮やかな供養碑などが黒い室内に浮かび上がり、ミステリアスなムードが漂います。
《ベスエンムウトの木棺》に記された『死者の書』本展最大の注目が、世界最長の『死者の書』《グリーンフィールド・パピルス》。全長37mの長編絵図が、オレンジ色の室内で壁面を周回するように展示されています。
『死者の書』は様々な試練が待つ旅路で死者に守護の力を与えるもの。《グリーンフィールド・パピルス》は女性神官のために作られたものです。
冥界の王オシリスの審判を経て永遠の生命を手に入れるまでが描かれていますが、珍しいのは他の『死者の書』にはほとんど見られない「天と地のはじまり」の挿絵。大気の神シュウが天空の女神ヌウトを持ち上げて天と地を作った様子が描かれています。
全長37mの《グリーンフィールド・パピルス》。「天と地のはじまり」が描かれている。会場後半の「冥界の旅II」は、一転して明るい展示室となります。審判をくぐりぬけた者だけが入ることが許された、来世の楽園のイメージでしょうか。
ここでは神殿の儀式道具とともに見つかった銀製の天秤皿や、裁判官が護符として身につけていたマアト女神の金製ペンダントを紹介。また、審判を無事に通過した証として、頭にロータスの花の冠をつけた《パセンホルの木棺》なども紹介されています。
《パセンホルの木棺》森アーツセンターギャラリーで開催中の東京展は、9月17日(月・祝)まで。会期中の金曜日は23:30まで見ることができる「ナイトミュージアム」も開催されます。
7月13日(金)のナイトミュージアムには、劇団四季のミュージカル『アイーダ 愛に生きた王女』でラダメス役を演じている一人、阿久津陽一郎さんがスペシャルゲストとして登場。古代エジプト壁画研究家の村治笙子さんとのミニトークショーは、多くのファンで賑わいました。(取材:2012年7月13日)