2001年に国内初の大規模な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」を
横浜美術館で開催した奈良さん。本展のタイトル「君や 僕に ちょっと似ている」は、ビートルズの「Nowhere Man」の歌詞に登場するフレーズです。
当時と現在では作者と作品の関係、また観客と作品の関係性が大きく変わりました。横浜美術館サイトの
作家からのメッセージにも、その変化が語られています。
大型ブロンズ彫刻の展示 / 《ノッポのお姉さん》 2012 © NARA Yoshitomo、《ちょっと意地悪》 2012 © NARA Yoshitomo本展はほぼすべての作品が新作です。最大の注目は、奈良さんにとって初の挑戦となる大型ブロンズ彫刻。絵画と同様に一見して奈良さんの作品と分かる強い個性が印象的です。
創作活動の原点に戻ったように、母校である愛知県立芸術大学に長期間滞在して原型を制作しました。
《樅の子》 2012 © NARA Yoshitomo奈良さんは、福島第一原子力発電所から約100kmに位置する、栃木・那須にアトリエを構えています。反原発再稼働デモのプラカード用に作品の利用を許可したことも、ネットで話題になりました。
奈良さんは「震災の後は、カンヴァスと自分との間に道具(筆)が入っているのが、なぜか許せなくなった」と言います。彫刻に取り組んだのも、自分の手で直接素材を触って作れることも理由のひとつです。
ようやく絵が描けるようになったのは、3月に入ってから。展覧会後半は、絵画の作品が続きます。
絵画が続く展示室 / 《Real One》 2012 © NARA Yoshitomo、《One Foot in the Groove》 2012 © NARA Yoshitomo、《Hey Ho Let's Go! (ぽとふ Version)》 2012 © NARA Yoshitomo最後の展示室には大型の絵画作品が三点 / 《夜まで待てない》 2012 © NARA Yoshitomo、《春少女》 2012 © NARA Yoshitomo、《Cosmic Eyes(未完)》 2012 © NARA Yoshitomo興味深く感じられたのは、展示室を出た後に紹介されていたパネル。奈良さんの経歴などの紹介とともに、絵画《夜まで待てない》の完成に至るまでの変遷が、写真で紹介されています。
最初は足まで描かれているなど全く別の構図でしたが、カンヴァスを塗りつぶして描き直し。現在の構図に近い形になった後も、さらに大幅に描き直して現在の絵になっています。
《夜まで待てない》の制作過程本展は
青森県立美術館、
熊本市現代美術館と巡回。その後にはシンガポール、オーストラリアでの開催が決定しており、他もアジア各国での開催に向けて調整が進んでいます。(取材:2012年7月13日)