菱餅や雛あられ、桃や貝にちなんだ和菓子が欠かせない雛祭りは、和菓子屋さんにとって大切な行事です。
本展では「虎屋」の14代店主・黒川光景(くろかわみつかげ)が、明治30年に生まれた娘・算子(かずこ)の初節句のために蒐集あるいは特注して調えた雛人形と雛道具が紹介されています。
雛人形
雛人形は江戸後期になると年々華美になり、幕府は贅沢なものを禁止するために雛の寸法を八寸(約24センチ)以下に制限します。
そんな風潮の中で生まれたのが、芥子粒(けしつぶ)に譬えた「芥子雛」と、それに見合う大きさの雛道具。
極小の扉の裏まで蒔絵を施すなど精緻を極めた意匠は、実は禁止令の中から生まれてきたのです。
雛道具
京都の名店、丸平大木人形店による雛人形は、柔和で高貴な風貌の内裏雛のほか、雅楽の動きが感じられる五人楽人など、酒盛りをして楽しそうな三人の仕丁もユニーク。
道具は牡丹唐草の蒔絵を施したもののほか、ガラス器や、珍しい銀製の雛道具もあります。
人形
展示室2では、知られざる根津美術館所蔵日本画コレクションとして「根津美術館の近代日本画」も開催。東洋古美術の収蔵館として知られる根津美術館にも、実は近代日本画が30点ほどあります。堂本印象「手毬図」などが初公開されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年2月24日 ]